チベット式

チベットの今、そして深層 by 長田幸康(www.tibet.to)

【本】『失われた旅を求めて』(蔵前仁一)/経堂の南インド料理屋スリマンガラムのミールズのテイクアウト

ひとことで言うと「昔の旅」の写真の本。どれくらい昔かというと、1980〜90年代だ。本書の帯にもあるように「バックパッカーが自由に旅できた時代」。もちろん今だって自由に旅はできる場所は多いのだが、国の発展や政情不安によって、バックパッカーから見れば、自由さが失われてしまったと思える場所もある。

失われた旅を求めて

失われた旅を求めて

  • 作者:蔵前 仁一
  • 発売日: 2020/04/15
  • メディア: 単行本
 

本書で「世界で最も変わってしまった場所」として、まず中国が登場するのは、本当にその通りだと思う。兌換券から人民元への闇両替、2泊3日硬座の列車旅、いかに中国人ぽく振舞って人民料金で切符を買ったり観光地に潜入するかの攻防などなど、バックパッカー的には挑戦ネタに困らない場所だった。あの自転車だらけの国が、今のように全国民が顔認証で管理される大国になってしまうとは誰も思わなかっただろう。

中国に続いて紹介されているのはクンジェラブ峠とチベットだ。クンジェラブ峠はパキスタンが側から越えたはずだがほぼ記憶がない。ものすごく小さなジープ状の車に押し込まれ、写真を撮る余裕すらなかった。いや国境の標識ぐらいは撮ったはずだが、その後、カシュガルで追い剥ぎにあいカメラとフィルム一式すべて盗られたので何も残っていないのだ。カシュガルからウルムチはバスで3日だったと思うが、こちらのほうが記憶にあるかな。

そしてチベット。ろくに公共交通機関もなく、県庁所在地なのにバスが3日に1本とか。それでも輸送トラックをヒッチして、けっこう色々な所にいくことができた。いちおう外国人が行ってよい場所は建前上限られていたはずだが、公安や解放軍など見張る側もたいてい大らかで、抜け道だらけで融通がききまくっていた。道路も交通機関も法律も整備された今と比べれば、不便だらけだったが、バックパッカー目線だけでいえば、とても自由だったのだ。

蔵前さんも本書で書いている通り、そうやって自由に旅できる日がずっと続くと、漠然と思っていた。というか、もっと自由になるとさえ勝手に期待していた。そして、裏切られた。まあ一方的な感傷なわけだが。

発展して便利になったというポジティブな(?)理由ではなく、戦争などによってアクセスできなくなったり、物理的に失われてしまった場所もある。そんなアジア・中東・アフリカの「失われた旅」を、いかにも昔っぽい味わいの写真とともにたどったのが本書だ。個人的にも蔵前さんから数年遅れで似たようなところに行っているので、どっぷり浸れる。

https://www.instagram.com/p/B_KRhvEppRK/

OSADA Yukiyasu on Instagram: “ポストに何か届いた音がしたので、ついにアベノマスクかと思って見に行ったら、蔵前仁一さん著『失われた旅を求めて』(旅行人)が到着! 旅行人の直販で買いました。速かった! もちろん #チベット も「世界で最も変わってしまった場所」として登場します☆”

本書では取り上げられていないが、個人的には香港。中国に返還された後もたいして変化はなかったが、まさか香港人自身のデモで行けなくなるとは思わなかった。あげくはコロナ禍で、もはや国内でさえ自由に移動できなくなったわけだ。

↓インスタに載せた写真から、1987年、香港の雑居ビル、チョンキンマンション(重慶大厦)のエレベーターにて。たしか16階まであって、安宿がたくさん入居していた。中国の長期ビザもここで取れた。商店やオフィス、ホテルはもちろん、工場まで入っていて、まさに雑居ビル。

https://www.instagram.com/p/B1L3JfvAq-M/

OSADA Yukiyasu on Instagram: “at Chungking Mansion, #Hongkong in 1987 summer on my way to #Tibet for the first time. #香港”

↓こちらは香港のマンゴースイーツ「許留山」(Huilaushan)にて。中国本土にも進出したが、コロナでどうなっただろうか。

https://www.instagram.com/p/Ba1U11og_xJ/

OSADA Yukiyasu on Instagram: “#now at another #Huilaushan 許留山, #TST, #Hongkong”

といった具合に懐かしんでいるわけだが、中にはたいして変わっていない場所もある。それがインド。蔵前さんも「変わった気がしない」と書いている。もちろん変わってないわけがないが、雰囲気というか、佇まいのようなものが変わりきっていないように感じるのだ。だから、これから行く人も間に合うと思う。それがインド時間。

↓こちらの写真はインスタには載せていないが、1986年、北インド、リシケシにて。チラム(マリファナ用のパイプ)をつくる職人だ。蔵前さんの『ゴーゴー・インド』にも「プク」として登場する。私は「クプ」と聞いた。「Kupu Baba」と名前を書いてくれたのだ。どっちでもいいけど。スイス・コテージというすごい名前の宿に泊まったら、隣に住んでいた。一緒に遊びに行こうと誘われて訪れたのが、チベット難民が住む町、ムスーリー。そこで初めてチベット人に出会ったのだった。クプの狙いは、肉と酒。リシケシは聖地なので、どちらも禁じられているからだ。

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↓これもインスタに載せていないが、1992年の、、マドラスかな。南インド。あ、今はチェンナイっていうんですね。チェンナイには今年の春、行くかも、という予定だったが、それどころではなくなってしまった。

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ちょうど今日、南インド料理屋のミールズ(定食)をテイクアウトしたら、カレーもライスもとてつもない量。もともと、おかわり自由なので、その分も入れてくれているのだろう。食い過ぎて眠れなくなって、これを書いている次第。↓インスタより。

https://www.instagram.com/p/B_Ul44vJdFd/

OSADA Yukiyasu’s Instagram post: “#経堂 #スリマンガラム のテイクアウトのミールズ、1つ一つ袋に入ってる☆ #StayHome #MealsReady”

では本日はこのへんでー☆

 

失われた旅を求めて

失われた旅を求めて

  • 作者:蔵前 仁一
  • 発売日: 2020/04/15
  • メディア: 単行本