チベット式

チベットの今、そして深層 by 長田幸康(www.tibet.to)

【本】『三蔵法師の歩いた道』(長澤和俊)/慈恩寺の玄奘塔(埼玉県岩槻)

ひきつづき玄奘関連の本。前回ご紹介した『玄奘三蔵 西域・インド紀行』の訳者による『三蔵法師の歩いた道 巡歴の地図をたどる旅』が到着した。玄奘の求法の旅の足跡を著者自身がたどるという内容。

著者の旅はシルクロードやインドの仏跡はもちろん、カザフスタンキルギスウズベキスタンアフガニスタンにまで及ぶ。玄奘の生涯を時系列で紹介しながら、その場所が今どうなっているのか、実際に訪れて記してくれている。玄奘の生涯や人となりも含めて、この1冊でだいたい、しかも正しく知ることができる。

玄奘が旅したルートはもともと色々な民族・宗教が混在している上、中国・ロシア・インドといった大国の国境が入り組んでいるエリアが多く、現在の旅行事情も複雑だ。入域や国境越えが叶わなくなっている場所も多い。

玄奘の時代にはパスポートとかIDといった面倒なものはなかった代わりに、山越え、砂漠越え、山賊といった危険がつきものだった。とはいえ行く先々で厚遇されることも多く、仏教を重用するインド諸国の王様たちに「ぜひもっと滞在して」と引きとめられて、なかなか離してもらえなかった、なんて微笑ましい(?)逸話も。そんなこんなで旅は17年に及ぶこととなった。

ナーランダで学ぶという目的を果たし、無事長安に帰った後の生涯も、本書は最後まで網羅している。そこで思い出したのが、埼玉県岩槻氏にある慈恩寺だ。すっかり忘れていたのだが、2015年に行ったことがある。拙著『ぶらり東京・仏寺めぐりり』(幻冬舎)のために原稿も書いた気がするけど最終的にはボツ。東京じゃないし。。

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慈恩寺の立派な玄奘塔。慈恩寺とは少し離れた場所にそびえ立っている。ただ名前がついているだけではなく、なんと玄奘の遺骨が祀られているのだ。もともと長安にあったはずのものが行方不明になり、日中戦争中に日本軍が南京で再発見。中国側に返還したという縁があり、一部が日本に贈られたのだ。さらに奈良の薬師寺にも分骨され、玄奘三蔵院に祀られている。

というわけで、玄奘シリーズはいったん終了!