チベット式

チベットの今、そして深層 by 長田幸康(www.tibet.to)

チベット・アムド地方ンガバ(Ngaba)小紀行(5)ンガバの町

「夏また来い。なんでこんな時に来たんだ?」
ンガバのチベット人に何度も言われた。

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たしかに以前、秋に来たときには、一面麦畑が広がっていて美しかった。今は2月。風景は一面茶色で、午後になると強い風が吹いて寒々としている。夏はきっと緑の草原が広がり、花が咲き、麦畑も青々としているのだろう。

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いや、そのことを言ったわけではないかもしれない。この町で僧侶が焼身自殺を図ったことを知っている今となっては、深読みせざるをえない。町で一番豪華な、ニェンポユルツェという聖山の名を冠したホテルは、中国人兵士たちの宿となっており、外国人は宿泊できなかった。

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ンガバ(Ngaba)は、西端にあるキルティ・ゴンパ(格爾登寺)の門前町である。ときどきメインストリートを、兵士を積んだ武装警察のトラックがゆっくり巡回している。中国のどこかからやってきた兵士たち。焼身自殺しようとした僧侶を射った(とされている)のも、こうした白い顔をした若い兵士だったのか。

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もうみんな慣れっこになっているのか、街中は意外なほどにぎやかで、穏やかそうに見えた。腹の具合が悪かったので、市場に果物を買いに行くと、バナナはもちろん、パイナップルやマンゴーも売っていた。市場に連れて行ってくれたチベット人が言った。
「ここで商売してるのは全員中国人だ」