ンガバはキルティ寺(キルティ・ゴンパ)の門前町。
まずは寺にお参りに行くのが礼儀というものだ。
昨年3月以降かなりひどいことが起こった場所でもある。
それを承知のチベット人に連れて行ってもらう。
と、門前には、いきなり公安の建物があった。
なんてわかりやすいんだろう。
町を巡回している武装警察のトラックは、
普段はここに駐車している。
さすがに写真もブレブレになる。
VCD屋のスピーカーから、けたたましいインド音楽が流れている。
なんだか滑稽なこの建物と武警以外は、
普通のチベット色豊かな商店街なんだけど。
大僧院キルティ・ゴンパには2000人ほどの僧侶がいる。
まずは、でかいチョルテン(仏塔)が目をひく。
ある転生ラマの部屋にお邪魔した。
インドにいる座主キルティ・リンポチェの若い頃の写真が掲げられている。
おいしそうな茹で肉がたっぷり目の前にあったのに、腹の具合が悪くて遠慮せざるをえなかったのが残念だ。
それでもバター茶はいただいた。
僧坊でのんびりしすぎたものだから時間が遅くなり、だいぶ風が出てきた。
これから巡礼者が続々とゴンパに集まってくる。
たまたまなのだが、その日は特別な日だった。
境内でただすれ違っただけの、知らない老僧が言った。
「あとで部屋に来い。茶を飲んでいけ。話をしよう!」
一見、邪魔する者などいない、
いつものチベット人たちの世界が、そこにあった。